「その一人」

二十年間の結婚生活にピリオドをうって、スミス夫妻は協議離婚をすることになった。
お互いの再出発を祝うお別れの晩餐の席で、スミス氏は夫人に言った。
「実はお前に聞いてみたいと思いながら、いままでつい聞きそびれていたことがあるんだが」
「あら、この際なんでも聞いてちょうだいよ」と、夫人は朗らかに応じた。
「では聞くが、気を悪くしちゃいけないよ。ぼくらの子供は六人のうち五人までが
黒い髪の毛をしているが、一人だけがブロンドだ。あれはいったいだれの子なんだね？
決して怒らないから、正直に教えてくれないか？」
「じゃ、言うわ」と、夫人はキッパリ答えた。
「あれだけがあなたの本当の子供よ」