2022/01/24 07:11
読売新聞 Evening Entertainment
ひめごと 田村芽実

今の時代は、数々の連絡手段がある。昔、仲が良かった友達、お世話になった人に、
その気になればすぐに連絡がとれる。
しかし、会うとなると、少し話は変わってくるのではないか。
小学生の時、親友という程ではなかったが、話していると楽しくて気の合う友達がいた。
彼女は集合団地に住んでいて、学校の帰り道で一緒になる時は、団地敷地内の公園で
少しだけ一緒に遊んでから帰った。
5年生の終業式の日も2人で帰った。その日、私は母とでかける約束をしていて、
公園で遊ぶ時間をショートカットした。
彼女が団地に帰る時、
「わたし引っ越すんだ。転校するの。だから今日が最後。めいちゃんばいばい」と
あまりにもあっさりと別れを告げられた。
状況が飲み込めなかった私は、「嘘でしょ!」と返したが、友達は、
「嘘じゃないよ、本当だよ!だからめいちゃんばいばい」と、もう一度笑顔で私に手を振った。
別れた後のひとりぼっちの帰り道も、信じがたく、もう一生会えないなんて考えられなかった。
春休みがあっという間に過ぎ、新学期に配られた学年表に彼女の名前を探したが、なかった。
それから、一度も彼女に会っていない。友達を介せば連絡を取れる手段はあったのだろうが、
彼女は私にとって特別な友達ではあるが、私は彼女にとって特別な存在であるのかわからなかった。
しかし、今でもたまに彼女の存在を思い出す。夢を語ったわけでもなければ、特別な絆が
あったわけでもない。
でも、私にとって彼女は、少し周りの友達とはちがっていたのだ。
大人になって何度か連絡をとってみようか考えたが、もう子どもの時のこと。彼女は私のことを
思い出すことなんてしていないだろうし、大人になった彼女と話せることはもうないかもしれない。
変わってしまった彼女に会うことを恐れていた。
しかし、よくよく考えてみれば変わったのは私も同じだろう。人間は成長し変わっていく。
それでも、私は、人間の変化をどこかで恐れ、過去の日々を懐かしんでしまう。
成長したい、変わっていきたい。そんな自分の気持ちとは裏腹に、人には変わらないでいてほしいと、
ほざいてしまう。
いつか、人の変化を恐れず、全ての過程を愛せる人間へと成長し、彼女にもう一度会いたい。

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