2021/10/06 07:11
イギリスの舞台俳優である故サー・セドリック・ハードウィックと
ホテルのバーで飲んでいたとき、給仕が一回注文を聞きにきたきりで、
わざと私たちを無視しているように思えた。
私は我慢できなくなり、テーブルに呼びつけてサービスが悪いとたしなめた。
これで少しはこたえただろうといい気持ちになっていたら、給仕が
去ってしまうとサー・セドリックが、
「給仕を叱るのはよしたほうがいいね。ホテルの持ち主なら
叱っても大丈夫。マネジャーもいい。まあ給仕頭まではいいとして、
給仕となると思い切った仕返しをされるからね。ついこの間、食堂を
出ようとして入口近くで二人の給仕のそばを通ったら、すみの方で
仏頂面をして一人昼食をしている男を二人がじっと見ているんだ。
と突然一人がにっこり笑って、もう一人を突っついて
「『おい、あれを食ったぜ!』と言ってるんだよ」

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