2021/06/18 07:11
スポートは心を打ち明けられる友であり、味方であり、どんなときも一緒の仲間だった。
スポートも私のことをそう思っていたことだろう。
わたしが学校に通いはじめると、スポートは朝はわたしを見送り、夕方にはわたしを
出迎えてくれた。
わたしがバスを降りると、待っていましたとばかりに飛びつき、しっぽを振り、ぺろぺろと
なめ、前足でしきりにじゃれつくのだ。そこでわたしは、「来い、スポート!」と叫び、一緒に
冒険に出かける。そして、学校がすんでから夕食の時間までの間に、少年と犬が一緒に
できるありとあらゆる冒険を楽しんだのである。
ところがある日、突如として、スポートは元気のいい出迎え方をしてくれなくなってしまったのだ。
わたしの傍らをゆっくりと歩き、家に着くとポーチにぐったりすわり込んだ。もう動くのも大儀だ、
というようすだった。
まもなく、スポートは食事のときにも姿を見せなくなった。わたしたちはスポートが古い貯水タンクの
そばに横たわっているのを見て、そこまで食事を運んでやった。スポートは食器の中のミルクを
なめたが、その舌は癌に冒されてもう半分しか残っていないのだった。
母は辛そうに顔をゆがめた。わたしは体が震えてしかたがなかった。その夜父がスポートの
口の中を調べた。
「何とかできるの?」わたしは尋ねた。
「楽に死なせてやることだな」父はおだやかだったが、きっぱりした口調で言った。
「スポートが死んでしまうなんていやだよ!」わたしは懸命に涙をこらえながら、そう言った。
「パパだっていやだよ」父が言った。「だけど、スポートはとても苦しんでいるんだ。
それに、どうしても助からないんだよ。わたしたちにできるのは苦しまずに死なせてやるか、
それとも大丈夫だと信じるふりをして苦しませるかどっちかだ」
わたしはその夜、妙に落着かない気持でベッドに入った。スポートの舌を見たわたしは、
その痛みを自分の痛みのように感じることができた。父が言ったことは納得できたが、
スポートを失うことに怒りを覚えたし、わたしたちが彼を眠らせようとしていることに
罪の意識を感じた。
翌朝は早く目を覚ますと、スポートのところへとんで行った。スポートは頭を持上げたが、
すぐ前脚の上にのせてしまった。わたしはそのかさかさになった毛をなでてやった。
するとスポートは、喉の奥の方から低いうなり声を上げた。まるで、あっちへ行ってくれと
言っているようだった。
父は町で、クロロホルムを買ってきた。
スポートは家の東側の丘の上に埋められた。乾いた土をきちんと盛り上げて塚をつくってから、
わたしは大きな白い岩をいくつか集めて目じるしにした。
わたしたちはスポートの思い出を語り、心の中にありし日の姿を思い浮かべながら、かれこれ
三十分ほど過ごした。
やがて父が、そろそろ帰ろうか、と声をかけた。そのころには、わたしたちはスポートを置き去りにして
帰るのではないと思えるようになっていた。

その日の午後のことを完全に理解するには何年もかかった。
長い間、わたしはあの日に自分は年老いたスポートを失ったのだと考えていた。
しかし、今のわたしにははっきりとわかる。
あの日、スポートは永遠にわたしのものになったのだ、ということが。

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