2021/06/12 07:11
「いつの間に・・」~リーダーズダイジェスト誌より

・・・ところがそのうちに、彼の髪はそれほど長すぎたりはしないように思えてきました。
ラベンダー色の、しぼり染めのジーンズだって、特別わたしが気に入ったというわけでは
ありませんけれど、その反面そうしかめっつらをしなくてもすむようになったのは不思議でした。
休暇ともなると、スーパー・ハイウェーを運転するときには、彼も交代でハンドルを握る
ようになり、その運転技術や落着いた態度は両親ともある程度認めないわけには
いかなくなりました。このぶんならば、学校の勉強も、親がそばでやいやい言ったり
しなくても、白分だけでちゃんとスケジュールを調整してやっていけるんじゃないかしら、
と考えたりするようになりました。
ヒステリー声を出して、「いったい全体、あんたは将来どうするつもりなの?」と険悪な
顔つきをしてしかりつける代わりに、わたしは純粋な関心から彼に質問をしました。
「あなたは将来どうするつもりなの?」
すると思いがけなくも、ちゃんとした生涯の計画を彼は話してくれるのでした。
こういった変化はみんな徐々にやってきました。特別に大騒ぎして作り出したと
いうわけでもありません。徐々に自然に出てきたのです。キッチンにもたびたび出入り
するようになったので、あるときわたしは料理のコツをいくつか教えてやりました。
そしたらお返しに彼はギターのコードを教えてくれました。
ある日、4歳になる末っ子のジョニーが顔じゅう血だらけにして、泣きわめきながら
帰って来ました。そのとき、かの16歳がどんなに変わったかということをわたしは
はっきりと思い知らされたことでした。顔の血をふき取り、目のすぐそばに大きな
傷口を見つけると、わたしはもう少しで取乱してしまうところでした。実際のところ、
力強い手がわたしの腕を押え、落着いた声がわたしに呼びかけるということが
もしなかったならば、わたしは逆上してしまったことでしょう。その声はこう言っていました。
「傷も目の近くはたいして深くないよ。まず病院に連れて行こうよ」
病院というところは非常に清潔を重んじるところなのに、ジョニーは泥だらけでした。
「こんなふうじゃ、この子をどこにも連れて行けないわ」とわたしは狼狽しきって言いました。
「自分の子だって言わなけりゃいい。どこかでこの子を見つけて、助けてやったようなふりを
すればいいよ」とこのティーンエージャーの息子は助言してくれました。
それから、「もう泣くんじゃない、ジョン」と弟に言います。
ジョニーは声の調子を落として、泣きじゃくりはじめました。そこで病院に急行し、
結局10針縫ってもらうことになりました。
家への帰り道、ジョニーを膝に乗せ、わたしはかたわらで運転している息子を、
不思議なものを見る思いで見つめたことです。
「いったいどうして」とわたしはたずねました。「あんなに何年もわたしを怒らせてばかり
いたのに、いつのまにちゃんとした人問になったんでしょうね」
「どうしてだか知らないよ、ママ」と彼は車の前方に視線をくぎづけにしたまま言うのです。
「だけど不思議だね。ぼくもママのことをちょうど同じふうに考えていたところなんだ」

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