2021/01/14 07:11
私がかつて知っていた盲導犬のサリーの話です。
サリーはとても頭の良い犬でした。
盲導犬としての訓練を優秀な内容で終え、飼い主さんの元へ
預けられました。
サリーは晴れた日も、雨の日も、嵐の日も、飼い主さんの目となって
歩き続けました。
盲導犬が覚えなければならないことの一つに「絶対に飼い主に逆らわない」
というものがあります。
賢いサリーももちろん、一度も飼い主さんに逆らったことなどありませんでした。
機嫌が悪い日の飼い主さんにどんなことを言われても、素直に従い続け
ていました。
時には理不尽な命令をされても、絶対に逆らったりしませんでした。
ただ、どんな盲導犬にも「定年退職」する日が必ず訪れるのです。
盲導犬は自分の欲求を全て抑え、飼い主さんに仕え続けるようしつけられているので、
とてもストレスが多く体力的に限界に達するのも早いそうです。
だからサリーにも、定年退職する日がやって来ました。
飼い主さんに連れられてやって来たのは、定年後の盲導犬たちが
余生を暮らす施設でした。
そこで、飼い主さんはサリーに語りかけたのです。
「今まで長い間、私の目になってくれてありがとう。ご苦労様でした。
本当にお疲れ様。今日からはここで、ゆっくりと余生を送っておくれ」
その施設は、引退した盲導犬たちが何不自由なく暮らせる楽園のような
場所です。
長年サリーにストレスをかけ続けた飼い主さんも、サリーにこれからは
幸せに暮らして欲しい、そんな思いから選んだ場所でした。
「さぁ、サリー、これからはもう私の面倒を見なくてもいいんだよ。
好きなことをして暮らせばいいんだ。これまで、本当にありがとう。
さあ、お行き」
飼い主さんはサリーを促しました。
楽しい余生を送ってくれよと願いを込めて送り出そうとしたのです。
でも、サリーは一歩も動きませんでした。
これまで通り、飼い主さんの目となり飼い主さんを守るため、飼い主さんの
そばを一歩も離れようとはしなかったのです。
飼い主さんに、もう行っていいんだよと促されても、サリーは自らの務めを
果たし続けようとしていました。
これまでに一度も、飼い主さんに逆らったことのなかったサリー。
生まれて初めて、飼い主さんの命令に逆らった瞬間でした。


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