2011/01/30 07:12


樋口一葉の日記のなかの「雪の日」の項は妙に艶めかしくて、ドキドキさせられる。
20歳の一葉は小説家としてスタートするために半井桃水に師事する。桃水は
長身でハンサム、言葉使いも柔和で、一葉は一目で好きになってしまう。
ある日、桃水への思慕を抑えがたくなった一葉は、意を決して桃水に手紙を出し、
会いに行く。大雪の中を二時間かけて桃水の家にたどり着く。訪いを入れても
返事がなく、しばらく外に立っていたが寒さに耐えられず、中に入ると、ふすま
一枚の向こうから桃水の寝息が聞こえる。一時間ほど待って、咳払いをすると、
桃水が跳ね起きる。男所帯の乱雑をきわめた部屋を片付けて、桃水は小説の話をし、
自慢の写真を見せたり、自らお汁粉をつくって一葉にふるまう。四時ごろになり
一葉が暇を乞うと、桃水は雪だから泊まっていけという。一葉は、とんでもない、
母に叱られます、と固く断る。桃水は、自分は友人の家に泊まるから、などと弁解する。
一葉は凛とした寒さの中を気持ちを高ぶらせて帰路につく。

この二人のことを後世の人たちは好き勝手に推察します。
木谷喜美枝
「二人の間はプラトニックなものだったと思うが、深い関係になった可能性もある」
前田愛
「二人の間にはなんかあったでしょう。でも証拠がない」
瀬戸内寂聴
「証拠はないけれど、傍証というか状況証拠はある。桃水から月々15円もらって
いたという記録がある。それに『にごりえ』は男を知らないと書けない」
田辺聖子
「桃水への恋心はこの世では果たせず、小説の世界へと昇華していった」
和田芳恵
「桃水から一葉へお金が渡っていることを根拠として、二人の間には肉体関係があると見る」
久保田万太郎
「二人の仲は清らかなものだったろう。和田芳恵氏のとらえ方はとんでもない」
井上ひさし
「桃水は気取っていて自分から女性に迫るような男ではなかった。一葉も自分から
一歩踏み出せるような女性ではなかった」
エリアンダー
「二人の間にはなにもなかった。一葉は母を惧れ、妹を気にし、世間の目をも異常に憚った。
桃水は、一葉が訪ねてきたとき眠っていた。好きな女性がやってくるのをわかっていて
寝ていられるだろうか?」

当の桃水自身はどう語っているだろうか。一葉の死から15年後に出版された一葉日記の
「雪の日」について尋ねられた桃水は答えている。
「二人の間には何もなかった。『雪の日』は一葉の創作で、一葉は、あの日は挨拶し、
小説の原稿を渡してすぐ帰っていった」
明らかに桃水は分が悪い。二人の間に何もなかったにせよ、「すぐ帰ったことはありえない」
一葉の日記は一葉の妹の邦子も愛読者だったから、一葉があの
雪の日すぐに帰って、あの内容の日記を書いたら、妹に嘘がばれてしまうだろう。

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