2010/02/13 07:11
「なんか売れそうな企画はないかな? きみたち、避妊薬かなんか飲んでるんじゃないの?
だってなんのアイディアも生み出さないんだから」
「編集長!こんなのいかがでしょうか」
「あっ、北野か、君は発言しなくてよろしい、どうせロクなのないんだから。
春の企画会議で君が提出したものを覚えてるかね?
『翔びすぎちゃったわたしたち~あるスチュワーデスの一夏の体験』、
『わずかな英単語であなたも喋れる~長嶋茂雄英語会話講座』またあんなのじゃないの?」
「こんどのは違います。『夏風の誘惑、ミッチーとサッチーのヌード写真集』です、
どうでしょうか?」
「そんな恐ろしいもの誰が買うか! おまえ気は確かなのか? 」
「でも恐いもの見たさということもありますから」
「ダメだ、それは想像するだにおとろしい」
「新人の新山さんの推理小説の原稿はどうでした?」
「新山はダメだよ、あいつの原稿を読んだけど、いくら犯人を分からなくするといったって
犯人が胎児で、それに凶器がへその緒なんだよ。なに考えてんだか。
それにひきかえ、むかしの松本清張の本はものすごく恐かったな、とくに著者の顔写真が」
「あのぉ、宮部さんの新しい原稿はどうでした? 」
「彼女の原稿も読んでみたが、ちょっとねえ。最後の最後まで犯人が登場しない推理小説
なんてはじめてだよ、これはヒットしないな」
「でも編集長、ラストを読んでトイレでワンワン泣いてたじゃないですか」
「えっ、わたしが?それは、そのう・・う~ん・・。しかしそれにしてもこのタイトルは
なんとかならんか!『らせん女ねじまき鶏パラサイト・イヴに花束を~カード殺人事件』、
長すぎるし、売ろうとする魂胆がみえみえだよ。タイトルを変えなくちゃダメだよ。
宮部クンの経済状態はどうなってる?」
「最近、結構売れてるんですが台所は火の車らしいです」
「う~ん、そうか、じゃあタイトルは『火の車』にでもするか。この原稿、ホッチキスで
とめといてくれ」
「はい、わかりました(カシャ)」
「カシャ? ちょっと待て!いまカシャって言ったか、なにホッチキスが言った?
そうだタイトルは『火車』にするんだ!」
このようにして名作「火車」は誕生し、この小説は売れに売れ、宮部みゆきの“火の車”状態は
解消し、続編の執筆にとりかかった。
ちなみに続編のタイトルは「シャッター」だそうである。どうも「カシャ」から離れられないらしい。

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